Pulp regeneration
歯髄再生治療

歯髄(歯の神経)を再生する
日本発祥の新しい歯科治療
「食べる」「話す」という機能を担うお口の健康を守ることが、全身の健康や社会的な活動を維持するうえで重要だと、近年広く認識されるようになりました。
歯髄再生治療は、むし歯や外傷などが原因で歯髄を失った歯を、再び生きた歯として回復させることを目指した治療法です。この治療により、自分の歯でしっかり噛んで食べたり、快適に会話を楽しんだりできるようになり、生活の質を向上させることができます。
対応している歯科医院は全国的に少なく、遠方から治療を受けるためにご来院いただく方もいらっしゃいます。気になることやご不安な点がございましたら、どのような些細なことでもお気軽にご相談ください。
歯髄再生療法とは
歯髄再生療法とは日本発祥の治療法であり、歯の神経や血管を再生することを目的としており、歯髄の損傷や病気に悩む患者に新たな希望を提供します。
現在、この治療は全国に22か所の指定クリニックでしか行うことができません。これは、国が定める「再生医療確保法」に基づく第2種の医療行為に分類されるためです。(治療を実施するためには、厚生労働省への届け出が必要です。なお、諸隈歯科医院では再生医療提供計画を提出し、厚生局で受理されています。)
このように、歯髄再生療法は高い安全性と信頼性を確保しながら、再生医療の新たな可能性を示すものです。
Point !
歯髄幹細胞とはどんな幹細胞なのか

歯髄に存在する幹細胞は「歯髄幹細胞」と呼ばれます。幹細胞とは、同じ種類の細胞に分裂する能力(自己複製能)と、皮膚や赤血球など体を構成するさまざまな細胞に分化する能力(分化能)を持つ特殊な細胞です。歯髄は外側をエナメル質や象牙質で保護されており、外部からの影響を受けにくいのが特徴です。そのため、遺伝子が損傷するリスクが低く、質の高い幹細胞を採取しやすいとされています。特に歯髄幹細胞は増殖能力が高く、短期間で多くの幹細胞を培養することが可能です。
歯髄幹細胞の採取には、通常、廃棄される乳歯や親知らずを利用します。この方法は骨髄から幹細胞を採取する場合と比べて、患者様の身体的負担が非常に少ないのが大きなメリットです。
歯髄を失うとどうなるのか
歯の神経に及ぶほど進行したむし歯の治療や外傷などで歯髄を失うケースがあることはご説明しましたが、では実際に失われてしまうと歯はどうなるのでしょうか。
- 01
むし歯になりやすくなり、色や見た目が気になるようになる
- 02
患者さまご自身で痛みに
気づきにくくなる - 03
歯の根に膿が溜まる
場合がある
歯髄再生療法を受けるメリット

痛みの感覚が戻り病気を自覚できる
歯に神経がない場合、痛覚が失われてしまうため、むし歯が進行していても気づかず、放置して重症化することがよくあります。しかし、歯髄が残っている場合、神経が痛みなどの異変を感知することで、むし歯や他の問題を早期に発見できる可能性が高くなります。この感覚機能は、歯を健康に保つために重要な役割を果たします。
むし歯の再発を予防し歯の機能が戻る
神経を除去し、その部分を封鎖する根管治療ではなく、歯髄再生治療を選択することで、むし歯の再発リスクを抑えることができます。神経が再生されることで歯の寿命を縮めないだけでなく、歯本来の噛む力を取り戻すことが可能になります。これにより、しっかりと食事を楽しみながら効率的に栄養を吸収することができ、健康的な生活を支える助けとなります。
歯を長持ちさせることができる
歯髄幹細胞を移植することで、治療前に削られた根管部分も再生できることが分かっています。歯髄があった部分には新たに歯髄が、象牙質が存在していた部分には象牙質が再形成されるため、歯の構造的な強度の向上が期待されます。また、歯髄は歯に水分と栄養を届ける重要な役割を果たします。これにより、水分や栄養が行き届いた歯は割れにくく、むし歯や歯髄炎、根尖性歯周炎などのリスクが軽減されます。このようなメリットから、歯をより健康に維持するための画期的な治療法として注目されています。
歯髄再生療法が必要になる
ケース
- Flow01
お口の状態を確認
治療の途中であるか、被せ物がされているか、または親知らずなど抜歯しても問題のない不要な歯があるかどうか、現在のお口の状況を確認します。神経を残すことが難しい場合には、抜髄(神経を取り除く処置)や根管治療が行われることもあります。
- Flow02
歯髄幹細胞の採取
歯髄再生療法を行うため、不要な歯を抜歯し、その内部から歯の神経を含む細胞(歯髄幹細胞)を採取します。
- Flow03
幹細胞の培養・神経の除去
採取した歯髄幹細胞を、約1〜2か月かけて増殖させます。この間に、歯の内部に残っている神経を徹底的に除去し、治療の準備を進めます。
- Flow04
歯髄幹細胞の移植
神経を取り除いた歯に、培養して増殖させた歯髄幹細胞を移植します。これにより、神経が失われていた歯に新たな神経が再生し、徐々に機能を取り戻していきます。
- Flow05
再生を確認し被せ物を装着
再生を確認したら、根管を封鎖し、最終的な被せ物を作製し装着します。
(咬んだときの微調整を行います) - Flow06
定期検診
むし歯の経過観察と合わせ、再発予防するために定期的なメインテナンスが重要です。
※もし、他院で重度のむし歯を診断され、抜歯の必要があると言われた方も抜かずに歯を残せる可能性があるので当院までご相談ください。
治療費
基本治療費
治療計画相談(コンサルティング) | 90分 15,000円〜※30分 5,000円 |
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再診料(主に経過観察時に行う検査等) | 4,400円 |
歯髄再生治療
前歯 | 990,000円 |
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小臼歯単根 | 990,000円 |
小臼歯2根 | 1,100,000円 |
大臼歯3根 | 1,105,000円 |
大臼歯4根 | 1,210,000円 |
※全て感染根管治療と補綴の料金は含みません。
キャンセル費用
自由診療開始後の無断キャンセル | 11,000円/30分 |
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歯髄再生療法の症例
歯髄再生治療(参考症例)

Before

After
治療回数 | 10回 |
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治療費 | 1歯 1,408,000円 |
内訳 | 精密根管治療(198,000円)+歯髄再生療法(990,000円)+セラミック(220,000) |
メリット | 歯の神経の再生、歯の延命 |
デメリット | 治療費 歯髄再生しなかった場合は再度再生医療を施行する必要がある。 |
備考 | 本症例は、名古屋RD歯科クリニックの症例を参考として掲載しています。 |
よくある質問
- 歯髄再生療法で回復する中に「歯」は含まれますか?
- 残念ながら、歯そのものを再生することはできません。歯髄再生療法は、歯の内部にある神経を再生するための治療であり、失われた歯そのものを元に戻すものではありません。
- 歯髄再生療法で回復できないケースはありますか?
- 歯髄再生療法は、歯の神経を再生する治療法ですが、むし歯以外にも歯周病や歯根の破折など、抜歯が必要とされる状態には適用できないことがあります。治療の可否は、歯の状態や疾患の進行度を総合的に考慮して判断されます。
歯髄再生治療の治療詳細
治療期間・回数
- 治療期間
- 1年~5年
- 治療回数
- 5~6回
歯髄再生治療前の注意点
歯髄再生治療は自費診療のため、保険診に比べると費用がかかりますので、あらかじめご了承ください。
以下のような理由により、歯髄再生治療の継続が困難と判断される場合には、治療を中止することがあります。
- 副作用(ショック、アレルギー反応、肝機能障害、腎機能障害、呼吸障害)が発生し、治療の続行が困難と判断された場合
- 治療開始後に、歯髄再生治療の適応外である基準が判明した場合
- 患者様または代諾者様から、治療を辞退する意向や同意の撤回が申し出された場合
- 治療計画全体を中断または終了する必要が生じた場合
- 治療効果を十分得るために必要な歯髄幹細胞を確保できなかった場合
- 治療効果が見込めないと判断された場合
- 血液検査においてCRP値や白血球数に異常が見られた場合(ただし、急性上気道炎、肺炎、インフルエンザなどの明確な原因がある場合は、治療を継続しつつ経過観察を行います)
- 治療担当医が治療中止を適切と判断した場合
ご不明な点は
歯科医師やスタッフまで

歯髄がない状態を放置すると、むし歯や根尖性歯周炎のリスクが高まり、さらに歯が脆くなり、割れたり折れたりしやすくなることがあります。
歯髄再生治療は、この歯髄を再生することで歯の健康を保つ治療法です。
治療費は高額で、治療には一定の時間がかかるものの、歯の疾患が悪化するのを防ぎ、歯をより長く健康に保つために非常に有効な手段です。
むし歯が進行して神経が失われているなどの歯の問題を抱えている方は、一度歯髄再生治療について検討してみてはいかがでしょうか。