日帰り全身麻酔手術
Anesthesia
Anesthesia
歯科医院で全身麻酔器を完備しているクリニックは
全国でも少数です。
現代の歯科治療において、全身状態を把握し管理を行いながら治療を行うことは、安全な歯科治療を提供するために欠かせないことだと考えており、「日帰り全身麻酔手術」は従来の歯科治療とは異なる「痛みのない手術」「入院を伴わない手術」を実現させた治療システムです。
歯科恐怖症患者やお身体に不自由を抱えている方、様々な事情で歯科治療を受けることが難しい患者さんに対し、完全に寝ている状態で安全・快適な歯科治療を提供します。
麻酔とは、治療が行われている間の痛みを取り除くとともに、患者さんの状態を厳重に見守り、治療が安全に行えるように全身の状態の管理にあらゆる努力をすることです。
全身麻酔のもとに治療を受ける場合、麻酔医によって痛みやその他の苦痛を取り除かれるだけでなく、血圧、脈拍、呼吸、体温などの全身状態が正しく管理された状態におかれ、歯科治療を安心して受けられます。
歯科で全身麻酔を行うことはそう多くはありません。しかし、治さなければならない歯の本数が多かったり、奥にある歯を抜いたりする場合、治療の時間が長くかかることがあります。じっとがまんできる時間は限られています。歯科治療では、お口の中で先の尖った鋭い器具をしばしば使います。治療による恐怖心によって頭やからだを大きく動かしたり、障がいのあるお子様では自分では意識しなくてもからだが自然に動いてしまったりする(不随意運動)と、安全に治療ができなくなります。動かずに治療ができなかったり、治療後に精神衛生上悪影響を与える恐れのある場合、全身麻酔を行った方が安全にできます。
全身麻酔の方法にはいろいろありますが、歯科治療におけるほとんどの麻酔の場合、治療の際に咬み合わせの調整が必要になりますので、管をお鼻から通して行う経鼻挿管が多く用いられます。
気管挿管の場合、眠ってから操作を行いますので、恐がることはありません。また、用いるラリンジアルマスクや管も細くて柔らかいビニールやシリコンで出来ており、喉に傷がつくことはありません。
麻酔ガスや静脈麻酔薬を用いた麻酔は、専門の知識や技術が必要です。近年は代謝の速い麻酔薬が多く用いられるため、治療後すぐに麻酔を覚ますことが出来ます。治療の間、麻酔医によって全身状態は全て管理されています。
治療が終わりに近づくにつれて麻酔の深さも徐々に浅くなるように調節され、そして間もなく目が覚めます。
吸う息と一緒にからだの中に吸収された麻酔ガスや静脈の中に入った麻酔薬により全身が麻酔され、その全身状態をより安全に維持する努力を麻酔医が行うことはすでにご理解いただけたと思います。一方治療が終わると麻酔医はそのような状態から普通の状態に戻すよう努力します。麻酔が浅くなってくると、患者さんは刺激により泣いたり、手足を動かしたりというように目が覚め始めます。
今までの説明でだいたい全身麻酔についてご理解いただけたと思います。より安全に治療を受けるために必要なこの全身麻酔も、患者さんの全身状態を知らずに麻酔をすることは大いに危険が伴うことは言うまでもありません。
そこで、全身麻酔を受けても大丈夫かどうかを調べるために、術前検査を行います。風邪など喉や鼻の状態がおかしい場合やアレルギー状態、咳き込む可能性がある場合などは治療や麻酔を延期した方が賢明といえます。また、貧血がありますと、からだの中に運ばれる酸素の量が少なくなり危険な状態になることもあります。そういう危険を避けるためにも予め血液の検査や胸のレントゲン検査などが行われるのです。
治療が延期される最も多い原因は風邪です。熱がある場合や咳、鼻水などの症状がひどい場合はもちろんですが、今の症状が軽くても風邪薬を最近まで飲んでいた場合や風邪が治って間もない場合も含まれます。
風邪以外では、次のような場合も延期になることがあります。
下痢をしている、発疹がある、家族やお友達が、水疱瘡、風疹、はしか、おたふくかぜなどにかかっている場合などです。
麻酔中は睡眠中と違い、胃の中に内容物がたまりますと嘔吐を起こしやすく、これが肺に入りますと窒息をおこしたり肺炎になるなど、非常に危険です。そこで、全身麻酔をかける場合、予め胃の中を空にしておくことが大切なのです。ですから全身麻酔予定時間の何時間か前から、食事の制限を指示されます。しかし小児の場合、ただ食事をさせなければそれで良いというものではありません。あまり長い間水分を与えないと今度は脱水による熱が出ることもありますので、麻酔医は各々のお子様に最も適した食事制限を指示することになります。
入院の場合、その指示を看護師が正確に実施しますから問題ありません。しかし家から病院に来て直接治療を受ける場合、この重要な食事管理を保護者の方に実行していただくことになります。
そのため、麻酔医に食事指導を受けた場合、ご家族全員で正確に守ってください。「かわいそうだから」といって、指示以外の時間に食べ物を与えたりしますと、取り返しのつかないことがありますので、この点だけはくれぐれも厳重に守ってください。保護者の方だけでなく、お子様の兄弟や、お姑さまなどにも良く理由を説明しておいて下さい。
麻酔中の患者さんには、安全のために必ず点滴が入れられますので、治療の後十分に目が覚めるまでは無理に水を飲まなくても心配ありません。完全に目が覚めて1時間程したら水分を摂らせてみます。もし、気持ちが悪くなって嘔吐するようでしたら、麻酔薬の影響がまだ残っていることがありますので、もうしばらく様子を観察したりします。麻酔そのものの影響はなくなっていても、数回の嘔吐を繰り返す場合もあります。この場合でも、麻酔中は十分に点滴から水分を補給していますので、例えすぐに水を飲まなくても心配はありません。水を飲ませて平気なようでしたら、しばらくした後食事を摂る事ができます。
このように、麻酔から十分覚めて2時間程すると、ほとんどの場合普通に食べられるようになります。日帰り入院の場合、その時間には帰宅できるほどの状態になります。
全身麻酔下に歯科治療を受けることは、非常にご心配であることは当然のことと思います。
いろいろと質問を受けます。確かに麻酔による死亡が全く無いわけではありませんのでご心配も無理のないことです。しかし、歯科麻酔を専門とした日本歯科麻酔学会認定医が全身麻酔中の全身管理を行います。麻酔を専門とする医師のいる麻酔が関係した事故は、交通事故による死亡事故の頻度(1万人に1人)よりもはるかに少ないといわれています。また、麻酔の後何ヶ月もしてから麻酔の影響がでることはありません。
しかし、だからといって全身麻酔に危険性が絶対にないということは断言できません。その為、麻酔をかける前に十分な診察や検査をして、状態を知る必要があります。このためには、ご自身の特徴をなるべくたくさん、どんな些細なことでも教えてください。ご家族の方々の麻酔や手術の事を話していただくことも大切なのです。
しかしながら、きわめて稀ではありますが、以下のような合併症が起こる危険性があることをご了解ください。
合併症を疑わせる症状が認められた場合は、患者様の救命ならびに後遺症を最小限にするためのあらゆる努力をいたしますが、その際には予定されていた処置とは異なった処置が行われる可能性があります。
どれほど細かく説明され、どんなに理解し納得したつもりでも、心配や不安感が無くならないのは当然のことと思います。でも、ある程度までは全身麻酔についてご理解いただけたと思います。
ご質問はいつでも受け付けておりますので、疑問に感じることがありましたら、担当医やスタッフに遠慮なくおたずねください。